フランスのオートピレネー、ナダのハドソン湾、ユーラシア大陸から北極圏にかけて、そしてイタリアのアブルッツォからノルウェーのスヴァールバル諸島に至るまで、クマは世界中で大自然が広がる多くの場所に分布しています。クマの周囲では、人間はできる限り目立ないよう行動することが求められますが、エクスカーションやクルージングでは、クマの威厳ある姿やその強靭さを観察することができます。世界各地に分布するクマとは、どのような生き物なのでしょうか。
北極の王 雪のようなシロクマ
一般的に「ホッキョクグマ」として知られるシロクマは、成獣で体重が約600キロ、後ろ足で立ち上がればその身長は3メートルともなる大型で完全肉食の動物です。堂々たるその姿は、見事の一言に尽きます。シロクマを一目見たいと思うなら、数十頭のシロクマが生息するカナダのワパスク国立公園、何百頭もが暮らすカナダ北東部のバフィン島、一年のうち数回にわたりシロクマが歩き回るスピッツベルゲン島の東海岸を訪れるのがおすすめです。周囲を囲む海に目をやれば、シロクマに備わる素晴らしい能力を知ることができるでしょう。冬が来ると、シロクマは獲物を求め氷上と水中の両方で狩りを行います。陸上最大の肉食獣であるシロクマは、群れで行動することは稀ですが、運がよければ、母クマと離乳前の子グマの親子を見つけることができるかもしれません。氷上のその光景はとても心温まるもので、忘れることのできない思い出となるでしょう。
森のプリンス 茶色の毛を纏うヒグマ
英語で“Brown bear”(茶色いクマ)と呼ばれるヒグマは、クマ科に分類される種です。特定の地域に分布し、それぞれに異なる習性を獲得しています。アラスカ州コディアック島に生息する、コディアックヒグマには、ホッキョクグマと共通の特徴が多くあり、とりわけ体重、体格共にホッキョクグマ同様に大型です。しかしその習性はシロクマよりヒグマに近く、特に冬眠に関してヒグマとよく似た習性を持ちます。春の半ばに冬眠から目覚め巣穴から姿を現すことから、集団で目撃されることもあります。 コディアックヒグマと比べ体格はやや小型(とは言え、身長は2メートル近く)で植物食を好むのは、北米大陸の森林や高地の至るところに分布するハイイロヒグマです。カナダのユーコン準州に位置するクルーエイン国立公園保護区には、広い遺伝的多様性を持つ種が生息しています。アラスカでは、7月になると珍しい光景が繰り広げられます。ハイイロヒグマがカトマイ国立公園保護区に集まり、集団でシャケを捕食するのです。この時期のごちそうであるシャケを捕ることで、越冬に必要な栄養源となる脂肪やタンパク質を十分に補給することができるのです。
安全にクマを観察するために
●常にガイドを行動を共にすること。これは陸上でも水上でも同様です。
●極めて静かに観察すること。クマはかすかな音にも敏感な生き物です。
●しっかりとした双眼鏡を用いること。ほぼすべての場合、クマの観察は一定の距離を置いて行われます。
山の侯爵 黒毛のクマ
世界には主に二種類のクロクマが生息しています。アメリカクロクマとツキノワグマです。ツキノワグマはヒマラヤ山脈に生息し、仲間であるパンダ同様に森の中に暮らしています。目撃できる可能性が最も高いのは、アメリカクロクマです。200万頭を超える個体が、北米大陸の高緯度地域に広く分布しているからです。身長約1.7メートル、体重が最大で250キロともなるアメリカクロクマは、カナダのブリティッシュコロンビア州を流れる川、フィッシュ・クリークを訪れる野生動物ファンにとっての特別な存在です。アメリカクロクマが威風堂々たる姿で川沿いに現れ、危険が伴う狩りを行います。普段は野イチゴを主に食べていますが、夏時期になると、淡水魚を求め川にやってくるのです。近くをハイキングすれば、シロアメリカグマの足跡に遭遇することもあります。シロアメリカグマの多くはアメリカクロクマのように黒い毛色ですが、遺伝子の変異によって、白色の毛皮を持つ個体が生まれます。この非常に珍しいクマの姿は、カナダのグリベル島、プリンセスロイヤル島、ロデリック島で目撃されています。
世界中に生息するクマ科の動物
世界の様々な地域に、独特の種が分布しています。小さい体(肩の高さが60センチ前後)が特徴のマレーグマは、胸部にある明るい模様にちなんでサンベアー(太陽熊)とも呼ばれ、東南アジアの森林に生息しています。インドの森林に暮らすナマケグマ同様に、蜂蜜を好み、そのことからハニーベアー(蜂蜜熊)と呼ばれることもあります。ヨーロッパにはヒグマが多く、特にオーストリアとスロベニアにかかるアルプス山脈一帯に、多くのヒグマが生息しています。南アメリカには、クマ属の亜種であるメガネグマという驚くべき種が生息しています。鼻から口にかけての毛色が変化していることが特徴のこのクマは非常に珍しい種ですが、エクアドルのサンタ・ルシア周辺で見ることができるかもしれません。チョコキムネオオハシやコンティガスといった美しい鳥たちと共に暮らしています。