チリ南部に浮かぶ、野生と神秘の島々
チロエ諸島は約40の島々から構成されています。チリのロス ラゴス州、パタゴニア沖の太平洋に位置し、アンデス山脈が海まで延びたような地形をしています。長い間、大陸から切り離され、ほとんど近づくことができない場所でした。その中で最大の島であるチロエ島(大チロエ島)は、今なお独特の歴史と野生動物、そして古くからの神話や伝説が息づく、神秘的な伝統の守り手となっています。
チリ沖に交差する多彩な文化
チロエ島の人々は、自らを「チリ人」である前に「チロテ(チロエ島民)」であると自認しています。16世紀半ば、島に住むマプチェ族やチョノ族がスペインの入植者たちを「迎えた」際にも、おそらく同じような誇りを持っていたことでしょう。先住民の文化とヨーロッパの文化が独自に混ざり合ったことで、チロエ諸島特有の神秘性と神話が生まれました。
17世紀から19世紀にかけて、イエズス会やフランシスコ会の宣教師によって建てられた300以上もの教会や礼拝堂は、この独特なアイデンティティの象徴です。南米でも他に類を見ない独創的な建築様式を持つこれらの色鮮やかな木造教会のうち、16棟がユネスコの世界遺産に登録されています。
二つの顔を持つ島、チロエ
この強い個性は、チロエ島の景観にも表れています。東側は穏やかな農村地帯で、風を遮る複雑に入り組んだ海岸線があり、牧草地や森が多くのフィヨルドや小島を見下ろしています。一方で西側は、太平洋の荒波に面した手つかずの原生林が広がっています。
この人里離れた西側には、タンタウコ公園、テプフエイコ公園、チロエ国立公園という3つの自然保護区があり、希少な動植物が守られています。川や砂丘、ラグーン、そしてシダの茂る森には、世界最小のシカ「プーズー」や有袋類、そして1834年にこの地を探索した博物学者ダーウィンの名を冠した絶滅危惧種の「ダーウィンギツネ」が生息しています。今日、ハイカーたちが彼の足跡をたどる一方で、船の上から南米オタリアやペリカン、そしてフンボルトペンギンやマゼランペンギンが共存するプニウィル ペンギン繁殖地の観察を楽しむ人々も大勢います。
伝説の地
風雨や波にさらされる海岸線や、霧に包まれた深い森の中で、母なる自然の強大さを反映した豊かな「チロテ神話」が育まれました。その始まりはチロエ諸島の創世神話にあります。海の神「カイカイ ビル」と大地の神「テンテン ビル」という二匹の大蛇が激しい戦いを繰り広げ、その破壊の跡からこの諸島の険しい地形が生まれたと伝えられています。
また、チロテ神話は先住民の伝説とヨーロッパの魔術が混ざり合っているのも特徴です。不気味な小人、美しい人魚、幽霊船、そして闇の魔術師。あらゆる超自然的な生き物たちが、生命の起源から日々の暮らしの出来事までを説明するために語り継がれてきました。現代ではかつてほど盲信されてはいませんが、今でもあらゆる世代の間で親しまれています。
チロテ神話の主な登場キャラクター:
• エル トラウコ (El Trauco):森の奥深くに住む醜い小鬼。女性の夢に現れて惑わすとされ、未婚女性の予期せぬ妊娠を説明する際に引き合いに出されることがあります。
• ラ ピンコヤ (La Pincoya):長い金髪を持つ美しい人魚のような存在。全裸で海から現れ、浜辺で儀式のダンスを踊ります。その踊り方によって、魚介が豊漁になるか不漁になるかが決まると信じられています。
• エル カレウチェ (El Caleuche):不気味ながらも人々を魅了する幽霊船。謎めいた魔術師たちが操り、夜のチロエ島沖を航行すると言われています。船の姿は見えなくても、遭難した乗組員たちを誘い出す不気味な歌声が聞こえてくるかもしれません。
• ロス ブルホス (Los Brujos):秘密結社「ラ ブルヘリア」に属する謎の魔術師たち。正体も居場所も不明ですが、恐ろしい怪物「インブンチェ」に守られた洞窟で隔離されて暮らしているという伝説があります。
神秘的で誇り高く、荒々しくも美しいチロエ諸島は、南米で最も魅力的な場所の一つです。これほどの神秘性を備えているのは、イースター島のモアイ像くらいでしょう。パタゴニアやフエゴ島を目指す旅路において、チロエ諸島は決して見逃せない場所です。
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