北極点を目指して

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氷の世界が放つ魅力

世界の最北、地球のてっぺんに位置する北極点。地理的に最も辺境な地であり、神秘的な魅力に包まれたこの場所は、探検家の心を捉え続けています。長年にわたり、多くの探検家が北極点を目指して旅をしてきましたが、この場所に秘められた魅力のすべてを解き明かせてはいません。過酷で壮大な北極について、より深く掘り下げてみましょう。

壮麗な氷の世界

北極を思い浮かべるとき、大抵の人々は、一面に広がる氷、果てしなく続く変化に乏しい白い世界を思い描くことでしょう。北極を訪れたことがある幸運な旅人たちは、そういったイメージと実際の景色が違うことを知っています。北極圏には、実は非常に様々な風景が広がっているのです。海流や風、季節によって流氷が生まれ、漂い、ひび割れ、分離し、その結果広い水域が生まれたり、海流が穏やかな場所では、ポリニアと呼ばれる氷で囲まれた海水域が形成されたりします。氷床同士がぶつかり合えば、氷が互いを押す力によって隆起が発生し、その大きさは海面上に数メートル、水面下では最大60メートルにもなります。刻々と変化する景色の中、氷もまた白や青に色を変え、夜明けや夕暮れ時には、まばゆい太陽の光を映し出します。氷の世界が奏でる繊細なシンフォニーは、色あせることのない印象を人々の心に残します。 『流氷の美しさは、心の目でしか見ることができない』 (グリーンランドに伝わる諺) クジラ、ホッキョクグマ、アザラシ、セイウチ、イッカクなど、高緯度の極地に暮らす野生動物もまた、素晴らしいショーを見せてくれます。極寒の環境から身を守るため、これらの動物は一様に分厚い脂肪層を持っており、体内の循環系は重要な臓器の周りに集中しています。極地の海に住む魚の中には、体の凍結を防ぐ特殊なタンパク質を生成する種までいるのです!

北極点と北磁極

北極点とは、厳密には一体どこを指しているのでしょう?地理学者にとっての北極点は、北極海の真ん中で地球の自転軸が地表と交差する地点を意味します。その一点にたどり着く誰もが、確かに世界の最北地点にいる人となります。しかしこれは、「その人が動き続けるならば」という条件付きです。なぜなら、北極点を覆う海氷は、風と海流の影響を受けて常に動いているからです! 北極点の定義は実はもう一つあります。それは、世界中のあらゆる方位磁針が指し示す場所です。この地点は「北磁極」として知られ、地理学における北極点とは異なる場所なのです。現在の北磁極はカナダのエルズミア島にあり、北極点から南に約500キロメートル離れた地点に位置しています。磁北極は毎年数キロメートル単位で移動していることから、その正確な位置は常に更新されなくてはなりません。地殻下にある液体の鉄が動くことで地球の磁場が変化し、北磁極も移動するのです。 世界の七つの海を旅するならば、北極点と北磁極の違いを知ることは極めて重要です。まっすぐに北極点へ向かおうとする船は、方位磁針上のゼロ度を目指して航路を定めるのではなく、現在の北磁極の位置に基づいて進む方角を調整しなくてはなりません。北磁極の正確な位置を常に計測する理由がここにあります。

極地の開拓者たち

極地という地理的要因と過酷な気候条件が、一世紀以上にわたり、多くの探検家の心を惹きつけてきました。1895年から1986年の間に、数多くの冒険家が自身の足で、または船や飛行船、航空機や潜水艦を用いて、北極点到達を試みました。しかし、北極点が動き続ける海氷のただ中に位置することから、到達は非常に難しい挑戦です。北極点と磁北極の違いも、方位磁針を「頼みにならないもの」にしてしまうことから、北極点到達を困難にする要因です。1909年、アメリカの探検家、ピアリー、ヘンソン、クックのそれぞれが、自分こそが真の北極点に到達した最初の人物であると主張しました。しかし、彼らの探検記録は未だその真偽がはっきりとしていません。世界で最初の船舶が北極点に到達したのは、比較的最近である1977年のことで、それを成し遂げたのは、当時のソビエト連邦の砕氷船アルクティカでした。その翌年、日本の冒険家である植村直己が、飛行機による物資補給を受けながら、犬ぞり単独行として世界で初めて北極点に到達しました。1986年になると、フランスのジャン=ルイ・エティエンヌが、そりを引く単独のスキー探検で北極点に到達し、記念の旗を立てました。同年、アメリカの探検家アン バンクロフトが、女性最初の北極点到達者となりました。冒険家たちが成し遂げたこのような功績によって、人類はその限界を一つ、またひとつと超えてきたのです。 『1986年には、GPSもなければイリジウム衛星電話もありませんでした。あるのは、極限の孤独と、自分自身の内にこもる強烈な体験です。振り返れば、それは最高の贅沢でした。北極点とは私にとって、自分自身との折り合いをつける学びの場でした』 ジャン ルイ エティエンヌ

北極海の潮流現象

北極海に浮かぶ海氷の中には、分離の際に融解するものもありますが、それよりも古く厚い部分は、溶けずに一年中残ります。しかしそれは一つの場所には留まらず、海流や海洋循環、地球の自転の影響を受けて移動します。19世紀後半に発見されたこの現象を利用して、北極点を目指した船乗りもいました。その一人が、1893年から1896年にかけて遠征船フラム号に乗った探検家、ナンセンでした。


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