南極大陸に深く入り込んだ氷の海
南極半島を越え、真っ白な氷が一面に広がるウェッデル海を進む船旅は、本当に特別な体験です。様々な野生動物との出会い、息をのむほどに美しいパノラマの眺め、広大な南極の風景。極地において人間は、通り過ぎゆく束の間の訪問者に過ぎません。ポナンの極地航海スペシャリスト、デイビッド・マリノー船長が、彼自身を魅了する南極の魅力について語ります。
ウェッデル海と南極半島の景色の違いとは?
ウェッデル海に入ると、そこには息をのむほどに美しい圧倒的なパノラマが広がります。南極半島に沿って進む船からの景色が、半島の切り立った高い山々から、南に向かい果てしなく広がる水平線へと変化するのです。南極半島の西海岸は、半島が風に対するシェルターとなり、比較的温暖です。それに対し、半島の東側に位置するウェッデル海には、南極からの凍てつく風が直に吹き込みます。そのため、ウェッデル海は1年の大半が氷で覆われており、航行は非常に難しく、天候と氷の状況に大きく左右されます。
ウェッデル海でのエクスペディションで出会う野生動物とは?
ウェッデル海は様々な野生動物の宝庫です。アンタークティック・サウンド(南極海峡)の入り口に位置するポーレット島や、さらに南に浮かぶかつての火山・デビル島に、アデリーペンギンのコロニーを見つけることができるでしょう。氷の流れによっては、氷上で眠るウェッデルアザラシやカニクイアザラシの姿が見られるかもしれません。しかし、この海で最も見たい光景のひとつと言えば・・・シャチやヒョウアザラシの捕食の瞬間です。
これまでの航海で最も忘れがたい体験は?
数年前のある穏やかな1日の終わりに、船はウェッデル海に停泊していました。南極ならではの静けさや氷がゆっくりと漂う壮大な景色を、お客様に楽しんでいただくためです。私は、船の左舷側に何か動くものを見たような気がしました。そのことをエクスペディションリーダーに告げた次の瞬間、シロナガスクジラがどこからともなく現れたのです!そこにいた私たちは皆、その見事な姿に圧倒されました。
ウェッデル海にまつわる興味深い事実とは?
ウェッデル還流は、周極海流の南側にある最も大きな低気圧性の還流です。その非常に特殊な環境によって、ウェッデル海は地球上の気候を調整する最も大きな要素の一つとなっているのです。海流や海水塩分濃度、海を覆う氷、そして風が相互に影響し合い、最も大きな冷却効果と酸素化効果を世界の海洋にもたらしています。
ウェッデル海は、ラーセン棚氷のような巨大な棚氷に隣接し、大型の卓上氷山が多い海です。気候変動の影響をより深く理解するために、ウェッデル海の氷山の動きが研究されています。
スウェーデンの探検家、オットー・ノルデンシェルド
- 1902年にスノーヒル島で越冬した初めての探検家。
- 自らが乗った船が沈没し、救助船を待っていたが、その船も氷に阻まれ沈没したことから、この島で2年を過ごす。
- 絶滅した大型のペンギンの化石を発見するなど、非常に重要な功績を残した。
- 彼が作った小屋が今も残る。