レンズが捉える世界

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「素晴らしい作品は撮影者の驚きから始まります」

写真や映像は、旅の思い出を色褪せることない形で残す最良な方法の一つです。その仕事をプロの手に任せることができれば、思い出はさらに素晴らしい形で旅人の手元に残ります。目立たない動きで被写体に近づき、多くの人々が見逃してしまうような細かな瞬間を捉える目を持つプロフェッショナル。ポナン専属写真家のオリヴィエ・ブルーと映像作家であるエリー・ヴァニエは、クルーズに乗船する方々が思い出に残したい大切な瞬間を、日々カメラで追っています。

これまでに訪れた場所で、最も印象に残っている場所はどこですか?

オリヴィエ・ブルー:南極です!写真家にとって特別な環境であり、魅力ある発見に満ちた場所です。南極では、自然も見える風景も常に移り変わります。その中で、光の美しさは格別です。目を引く何かがいつもどこかにあり、それを写真に収めて永遠に残したいという気持ちが沸き上がってきます。北極にもまた、壮大な美しさがあります。ホッキョクグマとの遭遇、そこに暮らす人々との出会いなど、魅力に溢れる場所です。 エリー・ヴァニエ:同感です。南極には、あの場所でしか味わうことのできない美しさがあります。南極を訪れるのは今年で4シーズン目ですが、決して飽きることがありません。足を運ぶたびに、野生動物や歴史について好奇心を掻き立てられる発見があり、以前にはなかった気づきがあるのです。特に思い出深いのは、乗船していたゾディアック・ボートのすぐそばに5~6頭のクジラがやってきて、エサを食べる姿を目撃した日のことです。言葉にしがたい素晴らしい体験でした」

最も珍しい動物や動物の姿を撮影した場所を教えてください。

ブルー:南極のサウスジョージア島です。明け方、朝日を受けた2羽のペンギンが、互いに向き合い立っていました。そのとき、ペンギンたちの頭とくちばしがハートを形作ったのです。普段はどこへ行っても撮影に走り回っていることがほとんどですが、あの日はシャッターを切る絶好のタイミングを待つことができ、素晴らしい瞬間を写真に残すことができました。 ヴァニエ:ニュージーランドの亜南極諸島を訪れたとき、緑色のセキセイインコの撮影に成功しました。ポナンのエクスペディションガイドに映像を見せると、とても貴重な種類であることがわかりました。

今なお残る感動があった場所はどこですか?

ブルー:すぐに答えられますよ!北西航路をたどるクルーズで訪れたディスコ湾です。氷河の上空を50㎞にわたりヘリコプターで飛び、氷河を見渡すごつごつとした岩場に降り立ちました。上空からの景色に、氷河の巨大さを実感しました。そしてその壮大さを目の前に、自分という存在がとても小さく感じられた体験でもありました。 ヴァニエ:これからの希望ですが、ル コマンダン シャルコーの船上から、周囲と完全に隔絶された環境に生きるペンギンの群れを見てみたいと思っています。

影響を受けた人物

ブルー: フランスのドキュメンタリー作家であるジャン・ミシェル・ベルトラン氏です。長期にわたりアルプス山脈で野生の狼を追ったドキュメンタリー映画、”Marche avec les loups”という作品を通して、どのように動物の撮影と向き合うべきかを示してくれました。膨大な時間とエネルギーが求められる仕事であることがとてもよくわかります。 ヴァニエ: フランスの野生動物写真家、ヴァンサン・ミュニエ氏です。類まれな素晴らしい作品を生み出しています。多くの野生動物写真家は、動物を完璧な姿で捉えようとしますが、ミュニエ氏は風景や影、逆光を様々な手法で捉え撮影します。その姿勢は、野生動物を収める写真が、動物の自然な姿だけを捉えたものでなくてもよいのだ、と教えてくれます。芸術作品として優れたものであってよい、むしろそうであるべきだ、ということを示しているのです。

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