手付かずの大自然がそのままに
バードウォッチャーの楽園へようこそ
西オーストラリア州最北部に広がるキンバリー地域の美しさについて、耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか。しかし、キンバリー海岸からすぐの沖合に浮かぶラセペード・アイランズという島々を知る人は少ないかもしれません。この島々は、バードウォッチャーの好奇心をかきたてるスポットです。なぜなら、多くの海鳥が営巣に訪れる重要な島々であり、バードウォッチングスポットとしてまたとない場所であるからです。ラセペード・アイランズについて、またそこに生息する多様な鳥類と海洋生物について、探ってみましょう。 ラセペード・アイランズは、短くは「ラセペーズ」とも呼ばれ、西オーストラリア州のキンバリー沖に浮かぶ4つの島々です。島々は、ラセペード・チャンネルと呼ばれる海峡によってオーストラリア本土から隔てられており、ブルームの街から北へ約120キロの沖合に浮かんでいます。島々を結ぶと、その距離は12キロ。粗砂とサンゴ片からなる低い砂地の島々であり、サンゴ礁の台地の上に背の低い植物が点在しています。
名前の由来は?
島々にラセペードという名前を付けたのは、フランス出身の冒険家であり地図製作者、博物学者、そして水路測量技師であったニコラ・ボーダンでした。同氏は1801年、かつてオーストラリア大陸を呼称する際に用いられた名称である「ニューホランド」と呼ばれる調査遠征に参加していました。そして同年8月5日、オーストラリアの魚種を分類したフランスの博物学者、ベルナール・ジェルマン・ド・ラセペードに敬意を表し、島々に彼の名を冠したのです。ラセペード・アイランズは1811年、オーストラリア大陸全体を描いた最初の地図であるフレシネ地図に初めて掲載されました。これは、イギリスの海図製作者であるマシュー・フリンダースによる地図、「テラ・オーストラリスまたはオーストラリア」(フリンダースが当時オーストラリア大陸を読んだ呼称)の完成に3年先立つものでした。かつて島々にはナポレオン島、グラント島、ビクトリア島の名称が付けられていましたが、現在では、ウェスト島、ミドル島、サンディ島、イースト島の名前で知られています。
鳥類と海洋生物の重要な繁殖地
1970年、ラセペード・アイランズの島々は、鳥類と海洋生物の重要な繁殖地として、オーストラリア政府によりAクラスの自然保護区に指定されました。1986年にラット(ネズミ)が根絶したことで、さらに多くの海鳥が島々に営巣するようになりました。その結果、鳥類の保護を目的とする国際NGO、バードライフ・インターナショナルによって、ラセペード・アイランズは「重要野鳥生息地」に指定されています。 島々に生息するカツオドリとベニアジサシの数は、世界全体の1%にあたります。カツオドリの繁殖コロニーとしてはおそらく世界最大規模で、つがいの数は1万8千組に上ります。また、約2万羽のベニアジサシも繁殖のために島々にやってくることが確認されています。他にも、アオツラカツオドリ、コシグロペリカン、マミジロアジサシ、オオアジサシ、ベンガルアジサシ、クロサギ、ギンカモメ、クロアジサシ、コグンカンドリ、オーストラリアミヤコドリ、オーストラリアクロミヤコドリが、島々で繁殖しています。キアシシギ、チュウシャクシギ、オオソリハシシギ、キョウジョシギ、オバシギも、島々を訪れます。 ラセペード・アイランズはまた、絶滅が危惧されるアオウミガメの繁殖地でもあり、西オーストラリア州で最も重要な繁殖場所となっています。周辺では、冬から初春にかけての回遊時期に、ザトウクジラが目撃されることも少なくありません。西オーストラリア海域に生息するザトウクジラの個体数はかつてに比べ回復しており、海岸線を回遊する個体は毎年4万頭と推定されています。 キンバリー地域を訪れるクルーズでは、ぜひゾディアック・ボートによるクルージングにご参加ください。ラセペード・アイランズを存分に探索し、数多くの鳥や海洋生物と出会う機会がやってきます。熱心なバードウォッチャーやバードウォッチング・ファンにとって、そして自然を愛する人々にとって、美しいキンバリー地域からほど近いラセペード・アイランズは、きっと素晴らしい旅の目的地となることでしょう。
写真:© PONANT: Nick Rains, © Studio PONANT: Morgane Monneret, Nathalie Michel, © Pixabay: Skeeze, © André-Joseph Mécou after Joseph Jauffret – パブリック・ドメイン © N. E. Maurin – CC BY, © Rupert Gerritsen – CC BY-SA, © U.S. Fish and Wildlife Service Northeast Region – CC BY